確率解析① エクセンダール本introduction

確率解析はもともと興味のある分野だったが、エクセンダール本を読んだっきり長らくやっていない。実家に本を置いてきてしまっているので、どうせならネットに落ちている古い英語版で勉強していこうという感じの記事。

 

以下のpdfを使用。

http://th.if.uj.edu.pl/~gudowska/dydaktyka/Oksendal.pdf

 

どうやら第五版のようだ。

 

1. Introductionから読んでいく。

1.1  Stochastic Analogs of Classical Differential Equations

多くの本と同様、このエクセンダール本は問題の提示からスタートする。人口の増加モデルや電子回路の物理学的挙動などを支配する決定論的な微分方程式には現実的にはノイズという確率論的なものによって左右されうる部分が入り込む余地がある。このノイズを数学的に取り扱うにはどうしたらよいのか。その問題を解決していくのが確率解析であり、確率微分方程式(stochastic differential equation)だ。

 

1.2 Filtering Problems

Filterのお話。s≤tとしてZ(s) = Q(s) + noiseとなるQの観測量Zがあるとき、Z(s)の情報からQ(t)を推定するためにはどうすればよいかという問題。Noise cancellingはあらゆる実証科学にとって重要な問題である。Kalman-Bucy filterの名前が紹介される。

 

1.3 Stochastic Approach to Deterministic Boundary Value Problems

決定論的な境界値問題を確率論的に解こうという試み。調和解析で有名なDirichletの境界値問題の解を確率論的に与えた角谷の例をはじめとし、ラプラシアンに限らず半楕円型作用素については確率論的なアプローチによって対応するDirichletの境界値問題の解を与えることが可能であると論じている。

 

1.4 Optimal Stopping

最適停止問題。確率微分方程式で挙動が記述されている確率過程が最大になるような時刻τをt≤τであるtまでの情報でどう予測すればよいか。具体的な例としては物価がランダムに変動するとき物を売る最適なタイミングの予測で、ファイナンス上重要な問題であることは確かだ。なんと最適停止問題は境界値問題の解によって解くことができる。また変分不等式によっても解くことができる。

 

1.5 Stochastic Control

最適ポートフォリオ問題。リスク投資と安全投資、この二つをどのような比率で行っていけばよいか。投資は決定論で到底扱いうるものではなく、数理的には確率論が絶大な威力をふるう。

 

1.6 Mathematical Finance

Black Scholes方程式に代表される数理ファイナンスの話。Scholesがこの結果によってノーベル経済学賞を受賞したことはこの分野においてあまりにも有名である(そして破産してしまったことも)。

 

2~4章で基礎を固めてから5章以降でこれらの問題を解決していこう!というのがこの本のスタンスである。数年ぶりに読んだがとても読み手に親切な設計であり、英語であるにも関わらずスラスラと読める。