宮寺関数解析を読む④ 一様有界性、開写像、閉グラフ定理

いよいよ有名定理が出て来て最初の山場に入ってきたことを感じる。

一様有界性、開写像、閉グラフ定理

4.1. 一様有界性定理

Baireのカテゴリー定理から入る

Baireのカテゴリー定理

 Xを完備な距離空間とする。 Xの可算個の閉部分集合 X _ 1, X _ 2, ... ,X _ n, ... Xを覆っているとき、少なくとも一つの X _ n Xの開球を含む。

証明の方針

背理法でスタート。 X _ nのどれにも含まれない点に収束する点列を構成することができる。

開球を含まないレベルの小さすぎる閉部分集合可算個だけでは、完備な距離空間を覆いつくすのは不可能ということだろう。

それでは次に一様有界性定理のに入ろう。

定理 4.1.

 Aを無限集合とする。 T _ a, a \in AがBanach空間 Xからノルム空間 Yへの有界線形作用素とする。このとき

 \forall x \in X:\sup _ {a \in A} ||T _ a x|| \lt \infty \Rightarrow \sup _ {a \in A} ||T _ a|| \lt \infty

証明の方針

 T _ aをおさえる定数をBaireのカテゴリー定理を適用できる集合族を構成することで示す。 X _ n = \{x \in X : \sup _ {a \in A} ||T _ n x|| \leq n \}とするとよい。

定理 4.2.

 T _ n, n=1,2,...はBanach空間 Xからノルム空間 Yへの有界線形作用素の列とする。すべての x \in Xに対して \lim _ {n \rightarrow \infty} T _ n xが存在すれば、 \{||T _ n||\}有界数列でかつ、 Tx = \lim _ {n \rightarrow \infty} T _ n xとおくと、 TはXからYへの有界線形作用素

 |T|| \leq \liminf _ {n \rightarrow \infty} ||T _ n|| (x \in X)

証明の方針

前段は一様有界性定理より明らか。後段については

 ||Tx|| = \lim _ {n \rightarrow \infty}||T _ n x|| \leq (\liminf _ {n \rightarrow \infty}||T _ n||)||x||を利用。(前半の等式は三角不等式とかで ||Tx||-||T _ n x||を評価してあげたりして示す)

定理 4.3. Banach-Steinhausの定理

 T _ n, n=1,2,...をBanach空間 XからBanach空間 Yへの有界線形作用素の例とし、 X _ 0 Xの稠密な部分集合とする。 \sup _ n ||T _ n x|| \lt \infty (x \in X)かつ各 x \in X _ 0に対して \lim _ {n \to \infty} T _ n xが存在すれば次の1,2が成立する。

  1. 全ての x \in Xに対して \lim _ {n \to \infty} T _ n xが存在する。
  2.  T x = \lim _ {n \to \infty} T _ n x (x \in X)とおくと、 T Xから Yへの有界線形作用素で、 |T|| \leq \liminf _ {n \rightarrow \infty} ||T _ n|| (x \in X)が成立。

証明の方針

1について一様有界性定理から、 ||T _ n||の数列はある定数でおさえられる。稠密性から、 x \in Xにおいて、 T _ n xがCauchy列であることを示して、 YBanach空間であることを利用する。

次は開写像定理にいこう。

4.2. 開写像定理

補助定理4.4.

 TをBanach空間 Xからノルム空間 Yへの有界線形作用素とする。 Xの単位球 S _ X (0,1)=\{x\in X : ||x|| \lt 1 \} Tによる像 TS _ X (0,1)の閉包が Yのある原点中心の開球 S _ Y (0,r) (r \gt 0)を含むならば、 TS _ X (0,1) \supset S _ Y (0,r)である。

証明の方針

 S _ X (0,1+\epsilon)の点 x y \in S _ Y (0,r)に関し y=Txを満たすようなものを数列の極限として構成できる。

定理 4.5. 開写像定理

 X,YをBanach空間とする。 T Xから Yの上への有界線形作用素ならば、 Xの任意の開集合 G Tによる像 TG Yの開集合である。

証明の方針

 \forall \rho, \exists \rho' {\rm s.t. } TS _ X (0, \rho) \supset S _ Y (0,\rho')を示す。Baireのカテゴリー定理も使う。

  • Banach空間からBanach空間への有界線形作用素は開集合を開集合に移す。

定理 4.6.

 X,YをBanach空間とする。 T Xから Yへの1対1、かつ上への有界線形作用素であるならば、逆作用素 T^ {-1} Yから Xへの有界線形作用素である。

証明の方針

写像定理を使う。連続作用素有界作用素の同値性を思い出そう。

4.3. 閉作用素

定義4.1.

 X,Yをともにノルム空間とし、 x \in X, y \in Yの対 [x,y]の全体 \{[x,y: x \in X, y \in Y\}]に線形演算とノルムを導入できて、ノルム空間にできる。( ||[x,y|| = ||x||+||y||])これを X Y直積空間といい、 X \times Yと書く。 X,YがBanach空間ならば、 X \times YもBanach空間。

定理 4.2.

 X,Yをノルム空間、 T D(T) \subset X, R(T) \subset Yとなる線形作用素とする。このとき、 G(T)=\{[x,Tx \in X \times Y ;x \in D(T)\}]の集合を Tグラフという。

 G(T) X \times Yの閉線形部分集合であるとき、 T作用素という。

定理 4.7.

 X,Yをノルム空間、 T D(T) \subset X, R(T) \subset Yを満たす線形作用素とする。 Tが閉作用素であるための必要十分条件は、

 x _ n \in D(T) (n=1,2,...), \lim _ {n \to \infty} x _ n = xかつ、 \lim _ {n \to \infty} Tx _ n = yならば必ず x \in D(T)でかつ、 Tx = yである。

  • 収束先が存在すれば、それらは D(T), R(T)に含まれているということ。

証明の方針

 \lim _ {n \to \infty} [x _ n , y _ n = [x,y]]

例 4.1.

有界区間 [a,b]で定義された1回連続微分可能な実数値関数の全体を Dとし、それに関して定義された微分作用素有界ではないが閉作用素である。

定理 4.8.

 X,Yはノルム空間、 T D(T) \subset X, R(T) \subset Yとなる線形作用素とする。

  1.  T有界かつ D(T)閉集合ならば、 Tは閉作用素
  2.  Tが閉作用素 T^ {-1}が存在すれば、 T^ {-1}も閉作用素

証明の方針

1について。閉集合ならば、収束する点列の収束先が D(T)に入ることが保証されているので、 y \in R(T)有界性から示せばよい。

2について。定理4.7.を用いて、閉作用素であることと同値な命題に言い換えるとやりやすい。

定理 4.9. 閉グラフ定理

 X,YをBanach空間とし、 T D(T) \subset X, R(T) \subset Yとなる閉作用素とする。 D(T)=X \Rightarrow T有界

証明の方針

 [x,Tx \in G(T)]を xに対応させる線形作用素について考える。


基本的な道具なのでソラで証明を言えるぐらいにはなっておきたいところ。使い方にも習熟しなくては。

次号

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