宮寺関数解析を読む① Banach空間

解析学の基礎体力が不足しているので、ゆっくりと復習していく。

宮寺関数解析

目標:関数解析の復習

第1章 Banach空間

☍1. Banach(バナッハ)空間の定義

1.1. 線形空間

定義 1.1. 線形空間

まずはお馴染みの線形空間の定義について復習。

要点は下記の二つ。

  1. 集合 X +に関してアーベル群になっている。
  2. 複素数体実数体 \Phiの元と Xの元の積(スカラー倍)が定義されており、 \forall \alpha , \beta \in \Phi \forall x, y \in Xに関して以下が成り立つ。
  3.  1x = x
  4.  (\alpha \beta) x = \alpha (\beta x)
  5.  \alpha (x+y) = \alpha x + \alpha y, (\alpha + \beta) x = \alpha x + \beta y

定義 1.2.

線形空間 Xの空でない部分集合が、和とスカラー倍に関して閉じているときに、線形部分空間という。

定義 1.3.

 S Xの空でない部分集合として、 Sの任意有限個の元の一次結合全体の集合を Sによって張られる線形部分空間という。

定義 1.4.

一次従属、一次独立。

定義 1.5.

線形空間 Xにおいて、任意の自然数 nに対して n個の一次独立な元が存在するとき、 X無限次元であるといい、そうでないとき有限次元であるという。

 Xが有限次元で 0以外の元を持つのであれば、次の条件を満足する自然数 nが存在する。

 Xの中に一次独立な n個の元が存在し、かつ Xのいかなる n+1個の元も一次従属である。

この n X次元という。

 {0}で表される線形空間 0次元とする

1.2. Banach空間

関数解析ではノルムという概念が中心的な役割を果たすが、Banach空間はそのノルムから定まる距離に関して完備性を満たすものである。

定義1.6. ノルム空間

線形空間 Xの各元 xに関して実数 ||x||が対応し、以下の三つの条件を満足するとき、 ||x|| xノルムといい、 Xノルム空間という。 \forall x,y \in X,  \forall \alpha \in \Phi

  1.  ||x|| \geq 0, ||x||=0 \leftrightarrow x=0
  2.  ||\alpha x|| = |\alpha | ||x||
  3.  ||x+y|| \leq ||x|| + ||y||

 d(x,y) = ||x-y||とすれば、これは距離の公理を満たす。

ここから、収束極限などの概念がノルム空間に導入される。

その後集積点閉包閉集合 \epsilon近傍開球閉球開集合などの位相的な概念を導入。

 X_1 \subset X_0 \subset Xとする。 X_1の閉包が X_0を含むとき、 X_0 X_1において稠密であるという。 Xが稠密な可算部分集合をもつとき、 X可分という。

ノルム空間の部分集合でノルムの上限が有界であるような集合は有界であるという。

定理1.1.

基本的な極限に関する性質。

定義 1.8.

ノルム空間の線形部分空間は元のノルムに関してノルム空間になっている。線形部分空間かつ閉集合であるものを閉線形部分空間という。

定理 1.2.

 Mをノルム空間 Xの線形部分空間とすると、 Mの閉包 \bar{M}は閉線形部分空間。

証明

 \bar{M}閉集合線形部分空間であることを示せばよい。定理1.1.の極限の性質を活用。

定義 1.9.

張られる閉線形部分空間

定義 1.10.

Cauchy点列

 \lim_{m,n \to \infty}||x_m - x_n||=0を満たす点列。

定義 1.11. Banach空間

ノルム空間 Xにおいて、任意のCauchy点列が Xの点に収束するとき、 X完備であるという。完備なノルム空間のことをBanach空間という。


次回:

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