宮寺関数解析を読む⑤ 線形汎関数

演習問題もやっていかないといけないな。

☍5 線形汎関数

5.1 線形汎関数の定義

定義 5.1.

線形汎関数線形空間から係数体への線形作用素

連続、有界などの定義もそのまま輸入できる。

定理 5.1.

 fをノルム空間 Xで定義された線形汎関数とする。以下の三つは同値。

  1.  fはある一点で連続。
  2.  fは連続。
  3.  f有界

証明の方針

定理 3.2.より従う。

さらに |f(x)| \leq ||f|| ||x|| (x \in X) ||f||=\sup _ {||x|| \leq x} |f(x)|も成立。

5.2. 幾何学的性質

線形汎関数幾何学的性質を調べる。線形空間 Xで定義された線形汎関数 fに対して、

 N _ {f} = \{x \in X: f(x)=0 \}

これは Xの線形部分空間。

定理5.2.

 X線形空間とする。

  1.  f Xで定義された線形汎関数で、恒等的に 0でないものとする。 x _ 0 \in N _ fとすると、任意の元 x \in X x = z + \alpha x _ 0 (z \in N _ {f}, \alpha \in \Phi)という形で一意に表せる。
  2. 逆に N X自身ではない Xの線形部分空間とし、 x _ 0 Nに含まれていないとする。任意の元 x \in X x = z + \alpha x _ 0 (z \in N, \alpha \in \Phi)という形で一意に表せるとき、 N _ f = Nとなるような線形汎関数が存在。

証明の方針

1について、 z,\alphaを構成するのは難しくない。一意性は二つの z, \alphaを等号で結んで fを作用されたりすれば分かる。

2については、 f(x)= \alpha _ xとおけば線形汎関数になっている。

 N _ f + x _ 0を超平面と呼称。 \{x \in X: f(x)=f(x _ 0 ) \}と表せる。

定理 5.3.

 fはノルム空間 Xで定義された線形汎関数とする。 f有界であるための必要十分条件は、 N _ f = \{ x \in X:f(x)=0 \}閉集合となることである。

証明の方針

 \Rightarrow有界と連続が同値であることを使うとよい。 \Leftarrowは超平面を使う。

定理5.4.

 fはノルム空間 Xで定義された有界線形汎関数であり、恒等的に 0でないとする。 M _ f = \{ x \in X: f(x) = 1 \}とおき、原点 0とこの超平面 M _ fとの距離を dとすると、

 ||f||= 1/d

証明の方針

定理5.3.で使った論法と同様。

系5.5.

 Xはノルム空間とする。

  1.  M Xの閉線形部分空間ならば、任意の x _ 0 \in Xに対して \{ z+\alpha x _ 0 : z \in M, \alpha \in \Phi \} Xの閉線形部分空間。
  2.  M Xの閉線形部分空間、 V Xの線形部分空間でかつ有限次元ならば、 M+V = \{ z+v:z \in M, v \in V \} Xの閉線形部分空間。

証明の方針

1について、 z+\alpha x _ 0と表すと、 z \alphaもCauchy列が収束する集合に属することに注意。

2については1と同じ論法で帰納法

このあたりで線形代数を思い出す。

5.3. 線形汎関数の例

例5.1.

 \{ \eta _ n : n=0,1,2,... \} \in lに対し

 f(x)=\xi _ 0 \eta _ 0 + \sum _ {i=1}^ {\infty} \xi _ {i} \eta _ {i}

 (x = \{ \xi _ n \} \in (c), \xi _ 0 = \lim _ {n \to \infty} \xi _ n)

有界線形汎関数

例5.2.

 l _ p , l _ qについても例5.1.と同様に定義可能。

例5.3., 5.4.

連続バージョンも同様。(積分はRiemann-Stieltjes式)